西国巡礼ワンショット(第3回)

西国巡礼ワンショットの第3回は、7番岡寺、8番長谷寺、9番南円堂(興福寺)と大和の寺々を巡ります。(本コーナーは12回シリーズで毎月展開。第1回目は1月17日、第2回目以降は毎月1日に配信しています)

岡寺境内のシャクナゲ

岡寺境内のシャクナゲ

【7番 岡寺】

岡寺の境内は、春ならばシャクナゲ、秋ならばモミジが美しい。高台にある三重宝塔から東へは「もみじのトンネル」があり、義淵僧正の廟所(びょうしょ)からは「しゃくなげの道」が通じている。本堂など境内を見下ろせる絶景ポイントもあって楽しい散策路である。この寺を開いた義淵僧正(ぎえんそうじょう)は皇室につらなる出生だったとの説もある。義淵僧正は奈良時代における仏教界のトップで、その後の日本仏教の展開に貢献した優秀な弟子たちを育てた。験者(けんじゃ)としても尊崇を集めたらしい。古称の「龍蓋寺(りゅうがいじ)」には、当時の国家や農民たちの祈雨(きう)や止雨(しう)への期待が込められている。草創は「官寺(かんじ)」としてであり、国宝も多い。

桜の頃の長谷寺

桜の頃の長谷寺

【8番 長谷寺】

長谷寺では本尊(ほんぞん)の特別拝観のおり、そのおみ足に触れることを許している。重要文化財であるから本来はあり得ないが、本尊との直接の結縁(けちえん)は、昔からこの寺にあった信仰の形なのだ。五叟(ごそう)が訪れた日も、両手で本尊と結縁しながら、何かを一心に願っている若い女性がおり、その姿を見ていて心の深い部分の琴線がふるえた。ところが、2015年の春、名だたる寺社の文化財に液体がまかれる事件が連続し、このご本尊も被害に遭われた。容疑者は特定されたが、いまでも実にやりきれない出来事であった。(長谷寺では西国三十三所草創1300年記念事業として、3月1日から「本尊十一面観音菩薩御影大画軸」を公開しています)

夕暮れどきの南円堂

夕暮れどきの南円堂

【9番 南円堂(興福寺)】

2018年10月に興福寺の中金堂が天平時代の様式でよみがえる。江戸時代の大火で焼失してからその再建は、300年間にわたる悲願であった。平安時代から鎌倉時代頃までの興福寺の力は絶大だった。大和一国の権力と財力とを掌握していたからだ。しかし、織豊時代以降の寺院政策で衰退し、明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)でさらに荒廃した。そうした中で光彩を放ち続けてきたのが南円堂の存在だった。西国札所であり観音を信仰する信者のよりどころだったからだ。この札所は、三十三所の中でも得意な点がある。納経時間がそれで、少人数の納経ならば朝5時から夜9時まで受け付けてくれる。